2020年12月28日月曜日

「パリ住み方の記」


 

「パリ住み方の記」

戸塚真弓


パリ住み方の記 (講談社文庫)

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1980年代のパリ。

著者の戸塚真弓さん一家が、4年の間に3回もアパルトマンを引っ越した体験記。

アパルトマン探しを通して、

パリの不動産事情や、

パリに住む人々の生活が垣間見れる一冊です。



この本を最初に読んだのは、もう20年以上前ですが、

ものすごい衝撃を受けた一冊なんです。


途中でちょっとだけ触れられている、フランスの不動産取引、

「ヴィアジェ」

この1ページの衝撃は凄かった・・・💫




この本で、私は初めて「ヴィアジェ」を

知りました。

それ以来、

フランスと聞くと、

「ヴィアジェ」

が、真っ先に頭に浮かびます。


久しぶりにこの本を読んだので、

改めて、ヴィアジェについて調べてみました。


このヴィアジェ、古くは古代エジプトや古代ローマ時代にも

さかのぼるシステムで、


『高齢者が持ち家の所有権を売却すると同時に、

生涯住み続ける権利を有しながら

売却代金を終身延べ払いで受け取る不動産売買契約』

(フランスのおける抵当権付終身貸付及び不動産ビアジェの現状

ーフランス不動産銀行、ルガス・ビアジェ不動産へのヒアリング調査ー

東洋大学法学部 准教授 太矢一彦より参照)

なのです。


例えば、

売主が80歳で、持ち家をヴィアジェで売却する場合。

普通に売却したら、3000万円相当の物件だとします。

仮に売主が90歳まで生きるという想定で、計算してみましょう。

ヴィアジェなので、売主は売却後も住み続けます。

10年間は、買主はその物件に住めないわけです。

なので、その期間に相当する金額を割引ます。

この場合40%(1200万円)の割引だとして、

3000万円-1200万円=1800万円

この1800万円というのがヴィアジェの価格となるのです。


買主は、

この1800万円の3分の1(600万円)を一時金として、

売主に最初に支払います。

残り1200万円。

これを10年間で割ると1年あたり120万円。

そして月々にすると10万円。

こうして、一時金600万円・月々の支払10万円と設定するのですが、

この月々の支払、

「売主が生きている間」

支払続ける

というのが、ヴィアジェなのです。


もし、

もしも、ですよ。


購入後1年で、売主が亡くなった場合。

一時金600万円と1年分の支払120万円の、

720万円で購入できてしまうのです。


逆に、

売主が長生きしちゃった場合はどうでしょう。

買主は物件に住めないまま、

ずーっと月々10万円を払い続けます。

当初の予定の1800万円を超える可能性もあります。

100歳まで生きたら、3000万円

110歳まで生きたら、4200万円

120歳まで生きたら、5400万円

と。

(上記の例は、ざっくりとしたシュミレーションですので、実際の契約は、もうちょっと違ってくるかもしれません)


このように、売主の寿命という、

予想不能な要素を含んでいるので、

支払総額がいくらになるのかわからないのです。


そう、

ギャンブルなんです💣



売主が亡くなるのを待つ不動産契約って、

いくらなんでも、

ひどすぎる~💦

と、始めてヴィアジェを知った時、

ものすごい衝撃を受けたのは、この点なんです。



実際に、

90歳でヴィアジェで物件を売りに出した女性が122歳まで生き、

10年間の支払いを見込んで購入した買主のほうが先に亡くなり、

買主の遺族がそのヴィアジェを払い続けたケースや、

早く物件を手に入れるため、

殺人未遂もあったそうです。

詳しくは、こちらの記事で↓

「ビアジェ」とは?時に壮絶な人生ドラマも生み出すフランスの不動産契約

映画『パリ3区の遺産相続人』~フランスの不動産システム「ヴィアジェ」とは?


ヴィアジェだと、色々なドラマが生まれそうですねぇ。

ちょっと特殊な不動産売買なので、フランスでも

不動産売買全体の1%にすぎないそうです。


でも、最初の衝撃から20年が経ち、

今、改めてヴィアジェについて考えた時、

自然と、私の視点も高齢者の売主サイドになります。


もし私がヴィアジェで物件を売ったとしたら・・・。

あれ?

結構いいかも?

悪くない!

と、思ったのです。


まず、私は死ぬまで物件に住み続けられるのです。

そして、物件自体は売却しているので、不動産にかかる税金や

維持管理も買主の責任です。

私は物件維持に関する煩わしさから解放されます。

さらに、毎月一定の収入。

うん、悪くない。

これは命を狙われるかもしれませんが、

間違いなく長生きしてしまいそうです(笑)


このヴィアジェ、

日本でできるかというと、

難しいかもしれないですね・・・。


でも、

通常の売却でもなく、リバースモーゲージでもない、

ヴィアジェというシステム、

結構いいのかも、と思うようになりました。


現在のフランスでは、

どのようになっているのか気になります。


そして、久しぶりにこの「パリ住み方の記」を

読み返していると、

今度は、

「年利11%という住宅ローン」という箇所に、

背筋が凍りつきました。

1980年代のパリ、

恐ろしい・・・。

この本を読むたびに、

新たな衝撃を受けています。


「パリ3区の遺産相続人」

こちらの映画もヴィアジェを扱った映画なので、

冬休みに、観てみたいと思います。


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