「パリ住み方の記」
戸塚真弓
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著者の戸塚真弓さん一家が、4年の間に3回もアパルトマンを引っ越した体験記。
アパルトマン探しを通して、
パリの不動産事情や、
パリに住む人々の生活が垣間見れる一冊です。
この本を最初に読んだのは、もう20年以上前ですが、
ものすごい衝撃を受けた一冊なんです。
途中でちょっとだけ触れられている、フランスの不動産取引、
「ヴィアジェ」
この1ページの衝撃は凄かった・・・💫
この本で、私は初めて「ヴィアジェ」を
知りました。
それ以来、
フランスと聞くと、
「ヴィアジェ」
が、真っ先に頭に浮かびます。
久しぶりにこの本を読んだので、
改めて、ヴィアジェについて調べてみました。
このヴィアジェ、古くは古代エジプトや古代ローマ時代にも
さかのぼるシステムで、
『高齢者が持ち家の所有権を売却すると同時に、
生涯住み続ける権利を有しながら
売却代金を終身延べ払いで受け取る不動産売買契約』
ーフランス不動産銀行、ルガス・ビアジェ不動産へのヒアリング調査ー
東洋大学法学部 准教授 太矢一彦より参照)
なのです。
例えば、
売主が80歳で、持ち家をヴィアジェで売却する場合。
普通に売却したら、3000万円相当の物件だとします。
仮に売主が90歳まで生きるという想定で、計算してみましょう。
ヴィアジェなので、売主は売却後も住み続けます。
10年間は、買主はその物件に住めないわけです。
なので、その期間に相当する金額を割引ます。
この場合40%(1200万円)の割引だとして、
3000万円-1200万円=1800万円
この1800万円というのがヴィアジェの価格となるのです。
買主は、
この1800万円の3分の1(600万円)を一時金として、
売主に最初に支払います。
残り1200万円。
これを10年間で割ると1年あたり120万円。
そして月々にすると10万円。
こうして、一時金600万円・月々の支払10万円と設定するのですが、
この月々の支払、
「売主が生きている間」
支払続ける
というのが、ヴィアジェなのです。
もし、
もしも、ですよ。
購入後1年で、売主が亡くなった場合。
一時金600万円と1年分の支払120万円の、
720万円で購入できてしまうのです。
逆に、
売主が長生きしちゃった場合はどうでしょう。
買主は物件に住めないまま、
ずーっと月々10万円を払い続けます。
当初の予定の1800万円を超える可能性もあります。
100歳まで生きたら、3000万円
110歳まで生きたら、4200万円
120歳まで生きたら、5400万円
と。
(上記の例は、ざっくりとしたシュミレーションですので、実際の契約は、もうちょっと違ってくるかもしれません)
このように、売主の寿命という、
予想不能な要素を含んでいるので、
支払総額がいくらになるのかわからないのです。
そう、
ギャンブルなんです💣
売主が亡くなるのを待つ不動産契約って、
いくらなんでも、
ひどすぎる~💦
と、始めてヴィアジェを知った時、
ものすごい衝撃を受けたのは、この点なんです。
実際に、
90歳でヴィアジェで物件を売りに出した女性が122歳まで生き、
10年間の支払いを見込んで購入した買主のほうが先に亡くなり、
買主の遺族がそのヴィアジェを払い続けたケースや、
早く物件を手に入れるため、
殺人未遂もあったそうです。
詳しくは、こちらの記事で↓
①「ビアジェ」とは?時に壮絶な人生ドラマも生み出すフランスの不動産契約
②映画『パリ3区の遺産相続人』~フランスの不動産システム「ヴィアジェ」とは?
ヴィアジェだと、色々なドラマが生まれそうですねぇ。
ちょっと特殊な不動産売買なので、フランスでも
不動産売買全体の1%にすぎないそうです。
でも、最初の衝撃から20年が経ち、
今、改めてヴィアジェについて考えた時、
自然と、私の視点も高齢者の売主サイドになります。
もし私がヴィアジェで物件を売ったとしたら・・・。
あれ?
結構いいかも?
悪くない!
と、思ったのです。
まず、私は死ぬまで物件に住み続けられるのです。
そして、物件自体は売却しているので、不動産にかかる税金や
維持管理も買主の責任です。
私は物件維持に関する煩わしさから解放されます。
さらに、毎月一定の収入。
うん、悪くない。
これは命を狙われるかもしれませんが、
間違いなく長生きしてしまいそうです(笑)
このヴィアジェ、
日本でできるかというと、
難しいかもしれないですね・・・。
でも、
通常の売却でもなく、リバースモーゲージでもない、
ヴィアジェというシステム、
結構いいのかも、と思うようになりました。
現在のフランスでは、
どのようになっているのか気になります。
そして、久しぶりにこの「パリ住み方の記」を
読み返していると、
今度は、
「年利11%という住宅ローン」という箇所に、
背筋が凍りつきました。
1980年代のパリ、
恐ろしい・・・。
この本を読むたびに、
新たな衝撃を受けています。
「パリ3区の遺産相続人」
こちらの映画もヴィアジェを扱った映画なので、
冬休みに、観てみたいと思います。
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